磨崖和霊石地蔵
広島県三原市鷺浦町(佐木島)向田野浦
■干潮時のみ全身が現れる海の巨石と磨崖仏
磨崖仏は「岩壁や岩盤に彫刻された仏像」のこ
とだが、磨崖とあるように、崖を磨いて彫りつけ
た仏という意をもつ。ただ、なかには、巨石など
に彫りつけられたものも存在する。今回紹介する
地蔵尊もその一つだが、正式には磨崖和霊石地蔵
(まがいわれいしじぞう) とよばれている。瀬戸内の海岸にある地蔵の
なかで、もっとも古いものとされ、裂け目がある
ためか、割石島(かつて向田の対岸にあった小島。
近世末に埋め立てて地続きになった)に面していた
ためか、それとも和霊信仰の影響なのか、和霊
(割石)地蔵とよばれている。
(『磐座百選』より一部抜粋)
木の宗山遺跡
広島県広島市東区福田町大字福田字狐が城
■北九州文化圏と近畿文化圏が交錯する地に立つ磐座
烏帽子岩とよばれる立石は、麓の福田地区から
も眺められる。標高260メートル、福田を一望
する地点にあり、古くより「金の段」とよばれて
いた。立石前の露頭した岩石が段のようになって
いるため、そうよばれたのだろうが、金という文
字が冠された「わけ」があったにちがいない。
「金の段」という言葉の響きは、地域の「秘所」
を暗示しているように思える。福田の人たちは、
神と対面できる場所として、一朝ことあれば立石
の前に集い、もろもろの願いを捧げたのだろう。
(『磐座百選』より一部抜粋)
厳島神社
広島県廿日市市宮島町1-1
■世界遺産の島の頂上にある巨石群
厳島神社の起源は詳らかではないが、推古天皇
元(593)年に佐伯鞍職が神勅をうけ、社殿を
造営したのが創祀とされる。式内名神大社で、安
芸国一ノ宮。平清盛が篤い信仰をよせ、現在見る
ことができる規模の社殿を完成させたと伝わる。
神社が発行した『伊都岐島(いつきしま)』に「伊都岐島と
いうのが古来の名称」とあり、神霊を斎( いつき)祀る島
「斎島」に由来すると記されている。
祭神は宗像三女神だが、これは鎌倉期以降のこ
とで、「伊都岐島神」が古来の神だったようだ。
おそらく、海上交通の守護神、宗像大社の市 いち 杵 き
島(いちきしま)姫と似ていることから、
同一視されるようになったのだろう。
(『磐座百選』より一部抜粋)